犬に舐められることで感染するカプノサイトファーガ感染症
ヒトとペットに共通して起こる感染症、いわゆる「人獣共通感染症」というものがあります。現在大きな脅威となっている新型コロナウイルス感染症も、人獣共通感染症のひとつです。今回は、特に犬から感染する人獣共通感染症のひとつ「カプノサイトファーガ感染症」についてご紹介します。
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カプノサイトファーガ感染症とは?
カプノサイトファーガ感染症とは、“カプノサイトファーガ・カニモルサス菌”という細菌によって引き起こされる人獣共通感染症です。
この細菌は世界中に存在していますが、犬の7割、猫は5割以上が保有している口腔内常在菌です。病気ではない健康なわんちゃん・猫ちゃんが、一般的にお口の中にもっている細菌になります。
犬に傷口を舐められることで感染します
犬や猫、特に犬の口の中や爪に常在する細菌なので、人に感染する経路としては主に、咬み傷やひっかき傷によるものが多くなります。
また、犬に舐められたときに、皮膚になんらかの傷があった場合、犬の唾液の中にいた細菌が傷口から飼い主の体の中に侵入し、感染する可能性が高くなります。わんちゃんとスキンシップを取る際は、十分に注意しましょう。
またパスツレラ症と同様、猫に噛まれることで感染した例も報告されていますので、猫ちゃんからの感染にも気をつけなければなりません。
カプノサイトファーガ感染症の症状
症状は、発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などを起こしますが、多くの場合は自然に治癒します。しかしまれに、敗血症、髄膜炎からDIC、ショック、多臓器不全を起こし、死亡する場合もあります。
※敗血症:何らかの感染症を起こしている細菌などが増殖し、炎症が全身に広がり、その結果、重大な臓器障害が起きて重篤になっている状態のこと
※DIC:外傷や、がん、急性白血病、細菌による重度の感染症などの病気をきっかけとして、全身の細い血管に血栓が生じたり、過度の出血症状が見られたりする重篤な合併症のこと
カプノサイトファーガ感染症で手足切断!!
カプノサイトファーガ感染症にかかったことが原因で、ショック症状やDICの発生により循環不全を起こし、手足の先端に壊疽を起こした例があります。その場合、壊疽した部分は切除しなければなりません。そのため、壊疽を起こした手や足を切断することになってしまうのです。
※壊疽:壊疽は感染症あるいは血栓症などによる循環不全を原因とする。皮膚および皮下組織、筋肉などの組織が壊死に陥り黒色や黄色に変化した状態を壊疽と呼ぶ。
40歳以上の男性に多く、近年増加傾向
カプノサイトファーガ感染症は、40歳以上の男性で多く報告されています。糖尿病、肝硬変、全身性自己免疫疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患があるかたでは、特に重症化する傾向があります。
また、免疫力の弱い乳幼児や高齢者にとっては、ほかの感染症と同様、リスクの高い感染症になりますので、注意が必要です。
まとめ
カプノサイトファーガ感染症に感染しないための予防策は、ペットのわんちゃん、猫ちゃんとの過剰なスキンシップは避け、噛まれたり、引っ掻かれたりするような状況を避けること。
傷口のある部分を舐められた場合は、すぐに流水で流して消毒する。少しでも体に異常を感じるようなら、早めに病院で診察してもらい、お薬を処方してもらいましょう!また診察の際には、「傷口をペットに舐められた」「噛まれた」など、自己申告することも大切です。
特に、乳幼児や高齢者、基礎疾患をお持ちのかたは、より注意が必要です。ご家族のかたが気をつけてあげてくださいね。
ペットのわんちゃん・猫ちゃんへの愛情の強さから、つい過剰なスキンシップをとりたくなってしまいますが、そこはぐっと我慢。ペットたちにとって、大切な飼い主さんが目の前からいなくなってしまうのは大きな悲しみです。しあわせな毎日を過ごすために、ペットと適切な距離を保ってコミュニケーションをとりながら、楽しく過ごしましょう!