猫に噛まれることで感染するパスツレラ症
ヒトとペットに共通して起こる感染症、いわゆる「人獣共通感染症」というものがあります。現在大きな脅威となっている新型コロナウイルス感染症も、人獣共通感染症のひとつです。今回は、より身近なペット、特に猫から感染する人獣共通感染症のひとつ「パスツレラ症」についてご紹介します。
パスツレラ感染症とは?
パスツレラ感染症とは、“パスツレラ・マルトシダ菌”という細菌によって引き起こされる人獣共通感染症です。
この細菌は世界中に存在していますが、日本の場合、猫の8割、犬の2割が保有している口腔内常在菌です。ほかにはウサギも保有していますが、病気ではない健康なわんちゃん・猫ちゃんが、一般的にお口の中にもっている細菌になります。
猫に噛まれることで感染します
犬や猫、特に猫の口の中や爪に常在する細菌なので、人に感染する経路としては主に、咬み傷によるものが多くなります。
甘噛みでも、傷ができるくらい強く噛まれれば感染する可能性はありますので、猫とスキンシップを取る際は、十分に注意する必要があります。
特に野良猫・地域猫は注意!
おうちで飼っているペットからの感染にも気をつけなければなりませんが、特におうちの外で野良猫・地域猫のお世話をしているかたには注意していただきたい感染症になります。
保護猫の捕獲や地域猫のTNR活動に参加しているかたは、どうしても猫に噛まれたり、引っ掻かれたりする機会が多くなります。基礎疾患をお持ちの方や乳幼児・高齢者など、免疫力の弱いかたは重症化する可能性の高い感染症ですので、ご自身の体調が悪いときは活動をお休みするなど、十分にお気をつけて活動してください。
※TNR活動:Trap/捕獲し,Neuter/不妊去勢手術を行い,Return/元の場所に戻す,その印として耳先をV字カットすることで、野良猫・地域猫を1代で終わらせることを目的とした活動。
パスツレラ症の症状
症状は、犬や猫に噛まれた部位の発赤(赤くなる)、腫脹(腫れる)、疼痛(痛み、表面よりも奥のほうがズキズキと痛む感じ)、軽い風邪のような症状から肺炎までさまざまです。
前述しましたが、とくに糖尿病などのような基礎疾患があるかたは重症化しやすいので、ペットと過剰なスキンシップ(口を舐めさせる、口移しでおやつを与えるなど)はしないように気をつけましょう!
獣医師・動物看護師にはおなじみの感染症!?
パスツレラ症ですが、実は、私自身は動物病院で診療していたときに何度も経験しております(苦笑)。動物病院で診察・治療をする場合、家族でもない他人におとなしく触らせたり、押さえさせたりするわけがない猫ちゃんたちを相手にしての仕事ですから、それはもう何度も、がっぷり噛まれました。
経験的に、噛まれたら腫れる!ということがわかっているので、深く噛まれたときにはまず流水で傷口を洗います。傷口からとめどなく流れ出る血を眺めながら、「今回は腫れないといいなぁ~」と思うのですが、だいたい腫れます。翌日には1.5倍くらいに腫れあがってくる指と、その奥から襲ってくるズキズキとした痛みと戦いながら、その後の1週間を苦しむ、ということはよくありました。
今度動物病院に行ったときは、獣医師や動物看護師の腕や手を眺めてみてくださいね^^。日々頑張っている証(あかし)である、名誉の傷跡が見つかりますよ(笑)。
まとめ
パスツレラ症に感染しないための予防策は、ペットのわんちゃん、猫ちゃんとの過剰なスキンシップは避けるということ。噛まれたり、引っ掻かれたりするような状況を避けること。
噛まれたり引っ掻かれたりした場合は、すぐに流水で流して消毒する。少しでも腫れや痛みを感じるようなら、早めに病院で診察してもらい、お薬を処方してもらいましょう!
また野良猫には不用意に近づかない、特に繁殖期などはオス猫同士のけんかが増えます。興奮している猫に近づくことは大変に危険ですので、決して近づかないようにしてください。
特に、乳幼児や高齢者、基礎疾患をお持ちのかたは、より注意が必要です。特に幼児~小学生の男の子は、かわいい!という気持ちが強くなると、ついしつこく猫ちゃんにかまってしまい、嫌がる猫に噛まれやすくなる傾向があります。ご家族のかたが気を配ってあげてくださいね^^